ミステリイーター!

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リア王 第一話 「人の恋路を邪魔する奴は褒め称えられるべき」


――次の日。
……。
「B組のカップルが、公園でボコボコになって発見されたらしいね」
「へぇー、それでー?」
「入院とかまではいかないみたいだけど、どうして守ってくれなかったのかとかどうとかで、結局ケンカ別れになっちゃったらしいね」
「何ソレ、こわーい」
「大丈夫、僕は君を見捨てないよ」
……。
登校中、きゃきゃっと騒ぐカップルの話を盗み聞きしながら、西園(にしぞの)公子(きみこ)はおもむろに『始末帳』と書かれた手帳を取り出した。
そして、それの「神山&大橋カップル」と記載されている部分に斜線を引いてぐじぐじと執拗(しつよう)に塗りつぶす。
と。
「……チッ」
鉛筆が真ん中で折れ、舌打ちしながら新しいもので作業を続行する。
「……」
力を入れ過ぎて、今度は芯が弾け飛んだ。
「……あ?」
3本目を取り出し、名前が真っ黒に染まるまで塗りつぶす。
「……よし」
鉛筆2本とページ1枚を無駄に使用してから、公子は心の中で舌舐めずりをした。
……次の標的はアイツらだ。
隣を歩いている生徒が、手帳をもの凄い形相で睨みつけている公子を怪訝な顔で見ている。
そちらに視線を向けると、相手はどぎまぎしながらも手をあげてくる。
「お、おはよー、西園さん……」
「……あ?」
「ごっ、ごめんなさい……」
「……」
公子は無言で親指を下に向けると、スタスタと歩き出した。
あいさつが何故奨励されているのか、公子はまったく分からない。
なぜならあいさつをされると、果てしなくイラつくからである。
コミュニケーションの道具などと、意味の分からない妄言を吐く輩も鬱陶(うっとう)しかった。
しばらく歩いていると、後ろから声が聞こえてくる。
「……あの人さー、感じ悪いよねー。友達すぐに無くすタイプっていうかさー」
「……フン」
だが、彼女にとってそんな事はどうでも良かった。
友達など、まずそもそも最初から1人もいないのだから。



学校に到着した公子は、まず全てのゲタ箱をチェックし始める。
いつもの日課である。
バタン、バタン、バタン、バタン、バタン、バタン。
全てのゲタ箱を恐るべきスピードで確認していく。
と。
ある人物のゲタ箱の中に、1枚の便箋(びんせん)を発見した。
『山本さんへ。人がいないところで読んでください』
「……フザけるんじゃないよ……!」
即座にビリビリに破り捨てる。
「ゴミが、クズが、カスがっ……!」
罵倒しながらそのチリを何度も何度も何度も踏みつける。
「死んでろ、邪魔だ、目障りなんだよ……!!」
そして最後に人間としてそれはどうなのかと思われるような事をしそうになった時。
キーンコーンカーンコーン。
朝のホームルーム開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。



教室に着くと、すでにホームルームは始まっていた。
教師が今週の予定などを口頭で伝えた後、
「風紀委員会の西園さんは、放課後に委員会がありますので出席してくださいね」
「……」
心の中で軽く舌打ちした後、左腕の「風紀委員会」の腕章を睨みつける。
対人コミュニケーションを忌み嫌う公子が、そのような組織に所属している理由はもちろん1つである。
2月14日。
その悪魔の日を、事前に阻止するためである。
その日の公子は、常人を超えた探知スキルを発揮し、サバトに使われる「ちよこれいと」なるものを全て事前に押収する義務を負っているのだから。
ちなみに押収したそれを、全て即座にトイレに流しているのももちろん公子である。



4時間目の授業が終了し、昼休みの開始を告げるチャイムが鳴る。
「……時間か」
「あ、待ちなさい、西園!」
教師が授業終了の合図もしないうちに、公子はイスを蹴って教室を飛び出した。
……。
いつものように購買部は、昼食を求める飢えた生徒たちでごった返していた。
「……邪魔だ、退(ど)きな!」
人ごみをかき分け、焼きそばパンとイチゴ牛乳を引っつかみ、いつもの習慣で誰もいない屋上へと続く階段を駆け上る。
……。
「……今日も平和のようだね」
屋上に誰もいないのは当たり前である。
そこにいるカップルは全て、公子が実力で追い散らすか、悪いウワサを流して破局に追い込んでしまったのだから。
周囲には誰も近づいて来ない。
学校一の変人だと認識されていても、そんな事はどうでもよかった。
友達などもとより1人もいないし、彼女はただ『リア充』が嫌いなのだから。
そう、それは暗くて昏(くら)くて冥(くら)い世界。
この世の混沌。
『あれ』は存在するだけで周囲に『毒』を振りまく。
いや、それは毒などという生ぬるいものでは決してなく。
ただの、害悪。
人々はそれを忌み嫌い。
激しく憎み。
この世から消えて欲しいと天に願った。
筆舌に尽くしがたい苦しみを受けた人々が、『それ』に付けた呼び名は。
リア充。
「……うるせーんだよ……!」
公子が握り締めたイチゴ牛乳の紙パックが、ぶちゅ、と音を立てて弾け飛んだ。
「……」
自身の顔に飛び散ったイチゴ牛乳を無言で舐め取りながら、本日夜の始末計画を考えていると。
ふと、屋上に2人の生徒がやってきた。
「ねぇねぇ。最近聞いた話なんだけど……」
「……!」
やってきたのが忌み嫌う「リア充」だった場合に備えての罵詈雑言が公子の頭の中に浮かんだが、その2人はどちらも女子生徒だった。
だが、独りを好む公子にとって、他人とのコミュニケーションは苦痛以外の何物でもなかった。
好むのは個室トイレでの食事であるのだから。
片方の生徒がそのまま話を続ける。
「リア王、って知ってる?」
「……」
昔の外国の戯曲など自分には全く関係なく、もし仮に見に行くとしても独り鑑賞は苦痛なだけなので、聞き流しながら公子は屋上を後にしようと――。
「あー、知ってる知ってる! あれでしょ? 毎日毎日放課後の教室に女子生徒を集めてはイチャイチャしてる男の……」

「おい」

「……ふぇ?」
相手は虚を突かれたようにまごついていたが、そんな事はどうでも良かった。
「……その話、詳しく聞かせな」
公子は今、この上なく最大にイラついていたのだから。
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  1. 2012/06/20(水) 20:01:45|
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  4. | コメント:2
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コメント

リア王1話

ただのコミュ障じゃねぇかwwww
  1. 2012/06/21(木) 11:44:47 |
  2. URL |
  3. 名無しの訪問者さん #-
  4. [ 編集 ]

だれうまwwww
  1. 2012/06/21(木) 23:24:07 |
  2. URL |
  3. 正体不明素敵紳士キタムラ #-
  4. [ 編集 ]

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