ミステリイーター!

ノベルゲーム「ミステリイーター!」を主とした、いくつかのゲームの開発ページです。

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星月欠片の場合 その2 「人間関係なんて、ロクな事はありませんから」


桧垣が馬鹿だと気づいたのは入学式の後、クラスでの自己紹介の時でした。

やたらと「平等」と五月蠅い担任がクラス分け早々席替えを行ったため、発表順は席の並び順となりました。
そう、それはロクでもない事でした。
それも……とびきりの。

「――小出身、田中由利(よしとし)です! 特技はサッカー、将来の夢はサラリーマン、誰でも気軽に話しかけてください! あと彼女募集中です!」
特に……いえ、限りなく興味も無いのに、聞こえてくる言葉は勝手に耳の中を侵食していきます。
「――友達が欲しいです!」
「――仲よくしてくれよな!」
「――気軽に話しかけてくれると嬉しいな」
調子に乗った一部の輩が「ただの人間には興味ありません云々」などと宣言していく中、ついに自身の番が回ってきました。
「……」
立ち上がり、大きく息を吸い、言葉を出さず――そのままフェイント気味に――片手の指先で机を軽く叩きました。
……。
おそらく誰一人として予想していなかったその行動により、教室内は静寂に包まれました。
このフザけた「イベント」の後に話しかけようとしてくるだろう女子、そしてあわよくば「彼女」を手に入れられると思っている男子。
それを確認し、つぶやくように言葉を放ちます。
「星月欠片。仲良くしていただかなくて結構ですので、私の事は無視してください。後、友達は募集していないので。ついでに半径一メートル以内に近づいたら訴えますから」
シンと静まり返っていた空気が、同時に一瞬で凍りつきます。
「……」
それを特に気にせず、すぐさま着席しました。
これでいいんです。
人間関係なんて、ロクな事はありませんから。
そのまま虚空を見つめ、次の人物の自己紹介を聞き流します。
どうせ、耳に入っても記憶する必要なんてありませんから。
「俺の名前は――」

「金出せオラアァァァッ!!」
……。
「……ッ!?」
突然思考に割り込んできた声に、隣を歩いていた暗子が身を震わせました。
昼休み、私は暗子を連れて校舎内を散歩していました。
そこで聞こえてきたのが、先ほどの声です。
……いえ、声に引き続き、何かを叩きつけるような音も聞こえてきます。
「星月さん……」
何ですか、最近は。
昨日は自殺志願者もとい極悪殺人未遂犯の事件が起きたと思ったら、今日はカツアゲですか。
全く、世も末ですね。
「暗子、あなたはどうします?」
自身の隣で身を震わせている同伴者に問いかけます。
「あの、私は……怖いから……そんな無意味なところへは行きたくな――」
「そうですね、では急行しましょうか。善は急げとも言いますし」
暗子が何やら泣きそうですが、まあ気のせいです。


数回ほど角を曲がり、たどり着いた辺境の音楽室付近の廊下。
今は昼休みですので、付近に自分と暗子、そして相手たち以外の人影はありません。
近くの屋上へと続く階段からの春の風が、辺りを桜の花びらと共に包んでいきます。
「さて、と」
3人の男子生徒が、その場に崩れ落ちた、また別の男子生徒を取り囲んでいます。
「……ひッ……!?」
そのうちの1人と目が合った暗子が、いきなり私にしがみついてきます。重いですが……まあいいでしょう。
「……」
そのうちのリーダー格らしき男子生徒が、崩れ落ちた方のポケットに手を伸ばして財布を回収した後、私に気づきこちらに向き直ってきます。
この3人は同じ学年の誰かだったとは記憶していますが、具体的な名前など覚える気もありませんので、そうですね……とりあえずブタゴリラーズとでも呼んでおきましょうか。
「ところでブタゴリラAさんにお聞きしたいのですが、」
「……誰がブタゴリラだよ」
……おっと失礼、つい心の中の本音を口に出してしまいました。てへぺろ。
「それはそうと、カツアゲですか。面白そうですね、私も混ぜてください。あ、分け前は五分でお願いしますね。あなたが」
「つまりお前が95%持っていくと……?」
「よく出来ました。見た目からすると小学校中退だと誰もが信じ込むレベルのあなたですが、奇跡的に卒業できる猿並みの学力はあったのですね。褒めてあげます」
「……」
何やら相手は呆れたようにこちらを見つめていますが、それ以上は何もしてきません。
ふむ、もっと煽ってみますか。
「あの、星月さん、」
「? 何ですか?」
「あの、もしかして……自分が有名人だっていう自覚……無い、かな?」
「私は常に平穏な暮らしを望んでいますので、有名だなんてお断りなのですが」
「……。その、いつも誰彼構わずケンカ吹っ掛けるから、その、学年内で星月さんの事知らない人はいないと思うんだ……」
「つまり、皆さん既に煽り耐性が出来ている、という事ですか」
……うっかりしていました。今度姉に新しい煽り方を聞いてみましょうか。
「まあそれはともかく。ではカツアゲ犯さんに質問なのですが、」
「カツアゲなんて人聞きの悪い。俺たちは貸した金を返してもらっているだけだ」
「まあ、不良は皆同じ事を言うものですしね」
暗子にだけ聞こえるように、そっとつぶやきます。
ここに来た本来の目的を思い出したのか、彼女が私の後ろに隠れました。
「そうですね……では、勝負しましょう。私が勝ったらそのお金は全額私の物、あなたが負けたら全額私の物、という事でいかがです?」
「ええと……言ってる事は確かに間違ってないけど……。っていうかそもそも取り返すとかじゃないんだ……」
暗子が何やらうるさいですが、どうせ大したことは言っていないので無視します。
「……俺たちにメリットが無い」
「そうですね、では私が負けたら……暗子を好きにしてください。煮るなり焼くなりいたぶるなりもてあそぶなり」
「……!(ふるふるふるふるふる)」
泣きそうな表情で首をブンブン振っていますが、まあ気のせいですね。いつも通り。
「お前は逃げるのか?」
「誤解です。戦略的撤退と言ってください。まあそれはともかく」
相手が全然煽りに乗ってくれないので、今回は全くもって退屈です。
「ではこうしましょう、もし私が負けたら、私の事をご自由にしていただいて構いません」
「……どういった意味で?」
「ご想像にお任せします。……どうします? 脱ぎますか? 触りたいですか?」
「「「……」」」
3人で一斉にじろじろと舐めまわすように見てきます。ぶっちゃけ限りなく不愉快なのですが。
そして相手たちは顔を寄せ合って相談した後、
「痛くても泣くなよ。顔は殴らないでおいてやる」
「まあ何でも構いませんよ。顔でも腹パンでも。私は殴り合うなんて野蛮な事はしない主義なので」
「……?」
さて、そろそろ頃合いでしょうか。
パチンと指を鳴らし、屋上方向を見上げます。


「来なさい、桧垣(ひがき)」


「星月欠片。仲良くしていただかなくて結構ですので、私の事は無視してください。後、友達は募集していないので。ついでに半径一メートル以内に近づいたら訴えますから」
シンと静まり返っていた空気が、同時に一瞬で凍りつきます。
「……」
それを特に気にせず、すぐさま着席しました。
これでいいんです。
人間関係なんて、ロクな事はありませんから。
着席し、虚空を見つめ、後ろの席の人物の自己紹介を聞き流します。
どうせ、耳に入っても記憶する必要なんてありませんから。

「俺の名前は桧垣、下の名前は忘れちまった! そして二つ名はΣ(シグマ)ZERO、漆黒の断罪者(ダークネスイレイザー)たる欠片姫の下僕だぜっ!」

……は?
茫然としているうちにも、彼の「自己紹介」は続いていきます。
「そう、今朝俺は姫の足元にひれ伏した! あの時、俺の覇吐鬼(ハバキ)が通用しないほど敵の龍撃(ドラウジーゲイズ)の威力は――」
「……えっと、ちょっと待ってください」
「だが、俺はそこで命を落とすと覚悟したが、突如現れた姫の双舞闘(デュアルザッパー)により――」
「あの、」
自分自身でも珍しいと思う程に、いつもの私のペースがあっという間に崩されていきます。
「だから俺はっ!」
「……っ」
桧垣に手を取られ、いつの間にか席から立ち上がった形になり、クラス中の視線を集めます。
そこでふと、ほぼ現実逃避同然に気づきました。
……私は、自分の話を聞かない相手に弱いのだと。
「姫、もう一度言います、俺は姫の事が好きです!」
……すみません、姫と呼ばなくていいので、限りなく私を巻き込まないでもらえますか。
……勘弁してください。


「てやーっ!」
桧垣が3人を蹴散らすのを遠くから見つめていると、おずおずと暗子が私の袖を引っ張ってきます。
「星月さん……顔、怖いよ……?」
「……失礼、桧垣にどんな責め苦を負わせるか考えていたもので」
一応、今までに何度もいたぶってきたのですが。まあストレス解消目的の時もありましたが。
「喰らえっ、天空裂破剣(ブラスターセイバー)っ!」
まあ、あれは中学三年生になっても中二病が治らない、可哀想なオコサマです。
もはやここまで来ると不治の病でしょうか。
「私いつも思うんだけど……桧垣くん、何で運動部入らないんだろう……」
相対する3人は既に息も絶え絶えなのに対し、桧垣は全く息が上がっていません。
「どうしたっ! 俺は……まだいけるっ!!」
面倒な事に中二病に身体の方が追いついてしまった、ただの脳筋馬鹿です。
この時間帯になると、屋上で謎のトレーニングなどをしていますし。
……。
そこでパンパンと手を叩きます。
「桧垣、ご苦労さまです。……さて、そこのカツアゲ犯のブタゴリラABC」
「……だからそもそもカツアゲじゃないんだが……」
その言葉を引きとるように、ブタゴリラCが口を開きます。
「ただの借金の取り立てだよ……」
「だってコイツ、五千円貸したのに毎日十円ずつ返していくとかフザけた事を言いやがって……」
曰くブタゴリラB。
あら、本当に借金の取り立てでしたか。てへぺろ。
「まあ、そんな細かい事はどうでもいいでしょう。……さて、」
廊下に転がった3人を見下ろし、告げます。
「約束のお金はどうしましたか? 私が勝ったらそのお金は私の物、という取り決めだったはずですが」
「あの話、本気だったのかよ……」
「私はいつだって本気です」
ただし、途中で取り消す事も多々ありますが。
「男に二言はありませんよね?」
私は女なので、取り消しても許されるに決まっています。
「……くそっ、コイツの借金分の五千円だ……」
ブタゴリラAが震える手で、千円札を5枚渡してきます。
「千円札ですか。気が効きませんね。やり直し」
「ちくしょう……!」
3人は仲間内でしばらく話し合うと、1人が不機嫌そうに言ってきます。
「……五千円札が無い」
「そうですか、では仕方ありませんね。一万円で許してあげます。ちなみに私にお釣りの持ち合わせはありませんので」
「フザけんな、何でさらに払わなくちゃ――」
「桧垣」
「分かった、払う、払えばいいんだろ!」
ブタゴリラCが渡してきた一万円札を手に取り、即座に自身の財布にしまいこみます。
「……」
そのままブタゴリラーズを見つめていると、Aが非難の声をあげてきます。
「……んだよ、行けよ、用事は済んだだろ」
「……。ところであなたの今の所持金はいくらですか?」
「……は?」
相手は実に意味が分からないといった様子で、目をパチクリさせています。
全く、非常識ですね。
「先ほどの賭けで辱められそうになったので、その分の慰謝料が欲しいのですが」
両手で身体を抱きかかえ、そのまま身を震わせます。
「『脱がしてやるぜぐへへへへ』などと、下卑た声で襲われそうになった時のトラウマが未だに忘れられません」
「んな事、俺たちは言ってないぞ!」
「……失礼、よく聞こえなかったのでもう一度お願いします」
「だから、俺たちは『脱がしてやるぜぐへへへへ』なんて一言も――」
「暗子」
言うなり、暗子が差し出してきた小型の機械、俗に言う『ボイスレコーダー』を受け取り、再生ボタンを押します。
『脱がしてやるぜぐへへへへ』
「さて、慰謝料の話なのですが」
「……ごめん……なさい……」
暗子が半泣き状態で、ブタゴリラーズに何やら頭を下げていますがまあどうでもいいでしょう。
「……汚ねぇぞ……」
「マジでまだむしり取る気かよ……」
相手たちが恐ろしい物で見るような目で私を見ています。さて、慰謝料金額に追加しましょうか。


「これで全部ですか?」
「……うう……」
えぐえぐと泣いている4人(1週間分の食費には少し足りなかったため、カツアゲの被害者もとい借金の債務者からも徴収しました)から有り金を全て吐きださせると、念のため聞いておきます。
「そうだよぉ……」
ちっ、貧乏学生め。
「ところで姫、これってどういう事なんですか?」
桧垣が辺りの状況を見回し、私に問いかけてきます。
「いえ、廊下を歩いていたら、突然彼らが私を裸にしようと襲いかかってきて……」
「んなっ……!」
「……ですが、私は彼らを許してあげる事にしました。だから桧垣、あなたも怒らないであげてください」
「……はい」
時計を確認すると、ちょうど授業が始まる数分前。
上手く時間もつぶせ、財布も重くなり、私は今とても幸せな気分です。
「……本当に……ごめんなさい……」
ブタゴリラーズに向かってしきりにぺこぺこしている暗子を引っ張り、幸せ気分ついでに、彼らに教えてあげる事にしました。
「それとですね、残念ながら私は年上趣味なので。オコサマはお断りです」
「「「……」」」
おっと、もうすでに聞こえていないようですね。
「さて、行きましょうか」
授業に遅れるわけにはいきませんので。
立ち去ろうとした時、背後から声が飛んできました。
「悪魔だ……」
「何か言いましたか?」
「……(ガク)」
今度は追いはぎでもしてやろうかと思って振りかえると、既に相手は崩れ落ちた後でした。
「さて、放課後はどこかへ外食でもしに行きましょうか、暗子、桧垣」
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  1. 2013/02/06(水) 16:32:13|
  2. 生徒会系
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

姫!踏んで!!私もその足で踏んで!!
  1. 2013/06/14(金) 11:56:59 |
  2. URL |
  3. とうずあゆか #-
  4. [ 編集 ]

そうですね、積む金額次第で考えてあげない事もない事もないかと。
とりあえずは腎臓を2つ売るところから始めてみましょうか。

それと、最近作者が私と姉の名字を「音無」にすれば良かったのではないかと悩んでいますが、まあどうでもいいですね。
  1. 2013/06/14(金) 22:27:22 |
  2. URL |
  3. 星月欠片 #-
  4. [ 編集 ]

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