ミステリイーター!

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リア王 第四話 「徐々に奇妙な日常」


西園公子は激怒した。
必ず、かの悪辣非道のリア充を地球上から滅ぼさねばならぬと決意した。
公子には人との接し方が分からぬ。
公子は、ただの高校生である。
リコーダーを吹き、野良犬や二次元の友人と遊んで暮らしてきた。
けれども他人の幸福に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう放課後公子は自身のクラスを出発し、図書館を越え廊下越え、数十メートル離れたこの元・生徒会室へとやってきた。
公子には友達も、恋人も無い。
知り合いも無い。14の、画面上の弟と2人暮しだ。
最近「ぼおいずらぶ」なるものを知った公子は、―――――――
……。
……。
……。

「はぁっ、はあっ……!」
毛布を跳ねのけ、ベッドから飛び起きる。
「ここは……」
とっさに周囲を見回すが、そこは見知った自室。
高校から程良く離れたマンションの中の一室。
枕元の時計を見ると、昨日から1日経った日付が表示されている。
ベッド脇のクマのぬいぐるみは、相も変わらず周囲に愛想を振りまいていた。
それを無意識に抱きしめつつ、今の状況を再確認する。
「……」
昨日の放課後、自分は何をしていただろうか。
「……思いだせない……」
何かとてつもない悪夢を見ていたような気がするが。
「くそ……」
悪態をつきながらベッドの上から起き上がる。
びっしょりとした寝汗で全身に張り付いた制服を引きはがし、
「……制服?」
毛布を蹴り飛ばし、ついでにクマを放り投げ、自身の格好を確認する。
「……!」
瞬間、あの忌まわしき記憶がありありと蘇ってきた。
昨日『リア王』と戦い、完敗した時の服装のままだった。
その証拠に制服の数か所に、昨日床を転がった時に付いたホコリの線が見えた。
「……」
だが、なぜ自分はここにいるのか。
敗北した自分は、あの場で意識を失ったはずだった。
「……」
まさか『リア王』にここまで運ばれたわけでもあるまいし。
疑問は残ったが、公子は登校の準備を始めた。



「……」
何があろうとなかろうと今日も今日とて、1人孤高の学生生活を始めるだけだ。
そう、それは過去も現在も未来も。
昨日も今日も明日も。
永遠に変わる事は無く。

「ねぇ、西園さんっ♪」

「なっ、なんだあんた達は!」
いつの間にか数人の女子生徒が公子の周りを取り囲んでいた。
登校中に話しかけられるという事など、公子にとっては不確定要素(イリーガルズ)の極みであり、この場合はどのような対応をすればいいのかと戸惑っていると、
「メアド、交換しよっ♪」
「……は?」
ケータイなど、もとよりかける相手がいない自身にとっては無用の長物であるが、もしかしたら使う可能性が兆分の一くらいあるかもしれないので、密かに買っておいたわけであり、いや確かに無用であるが、もしかしたらもしかしたら可能性があるわけで――
「ね、いいでしょ?」
こちらの思考をガン無視して相手の言葉が割り込んでくる。
「……」
よくよく周囲の顔ぶれを観察すると、彼女たちは全員昨日『リア王』と共にいた生徒たち。
一番奥に女顔の男子生徒が、大量の女子生徒の集団の中に紛れ込んでいるのが気になると言えば気になったが、
(……大量の?)
いつの間にか公子の周囲の女子生徒の集団は膨れ上がり、軽く1つのクラスを構成できるほどになっていた。
「ねぇいいでしょ♪」「西園さん♪」「おトモダチになろ♪」「アドレス交換しよっ」「そうだ、今度一緒に買い物行かない? いいお店知ってるんだ」「あの、ボク、ボク……」「西園さんっ」
……。
……。
大量に集まった生徒群は、口々に言う。
「認めない、こんなのあたしは認めないよ!!」
絶叫気味に叫ぶが、相手たちは聞いているのかいないのか、さらににこやかに迫ってくる。
「……ッ!」
いつの間にか足が勝手に動いて、その場から逃げだしていた。
だが。
「……え?」
駆け抜けた次の曲がり角に、また別の集団。
「ねぇ」「西園さん」「交換日記を」「そのうち家に遊びに」「好きな人は」「お風呂ではどこから洗うの」「西園さん♪」「西園さん♪」「西園さん♪」「西園さん♪」「西園さん♪」「西園さん♪」「西園さん♪」
「うぁっ……」
そこで精神の限界が訪れたのか、公子は再び気絶した。



「……」
目覚めた場所は、再びベッドの上だった。
しかし今度は、学校の見知った保健室。体育の授業や、誰かと共同作業を行う授業がある時は実にお世話になっている。
そしてライトグリーンのカーテンを引き開けると。
「……ちっ」
わざと大仰に舌打ちする。
窓の外はうっすらと夕闇に包まれており、頭上に掲げられた時計を見ると5時を回っていた。
(つまりあたしは丸半日寝てたって事か……)
「……」
大幅に時間を無駄にした事は割とどうでもいいのだが、それよりもおなかが空いている事の方が今の公子にとっては重大な問題だった。
この時間帯になってしまってはもう学食は閉まっているだろうし、購買部で店員に恵んでもらう事もできやしない。
「……」
ふと枕元見た公子は、そこに何か木製のカゴのような物が置いてある事に気が付いた。
よくよく観察すると、それは俗に言う……お見舞い用のフルーツバスケット。
そしてその中身はどこへ消えたのか、空いたスペースに申し訳程度に収まっているのは。
『西園さん、早く元気になってね』
『明日もまた会おうよ』
『ホントはボクが看病できたらいいんだけど……ゴメンね』
『後でお見舞いにいくから覚悟しときや♪』
さらに男子からなのか『好きです、付き合ってください』と書かれた――
「うああああああああっ!!」
そこでついに限界が訪れ、全てのお見舞いカードを放り投げた。
「悪夢だ、これは悪夢だ……!」
両手で頭を抱え、ガタガタと震える。
「ああああああぁぁっ……!」
そのまま数分ほど頭を振り乱していたがいい加減疲れてきたのでヘッドシェイクを終了した公子は、どこからか「シャリ、シャリ……」という音が聞こえてくるのに気づいた。
そしてただようフルーティな香り。
「……?」
いぶかしみながらもその方向に向かうと……。
「どうした。精神錯乱者がいるのかと思ったぞ」
「あんたは……!」
『リア王』が保健教諭用のイスに座り、リンゴの皮を剥いていた。
机の上には洋ナシやバナナ、パイナップルといった多種多様なフルーツ。
そして切った果物を1つ1つ、どこから出したのか保健室の備品らしき皿の上に載せていく。
「……ふむ、慣れてない皮むきはいかんな」
切って血でも出したのか『リア王』は自身の人差し指を舐めながら、
「さて、西園ハム子。本来の話をしようか」
「……?」
自身の誤った名前に対して抗議する以前に、相手の発したその言葉の方が気になった。
「俺がお前を呼んだ、本来の理由を」
そう言うと彼は皮を剥いたリンゴをためらいなく、全て自身の口へと放り込んだ。
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  1. 2012/07/15(日) 21:14:28|
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