ミステリイーター!

ノベルゲーム「ミステリイーター!」を主とした、いくつかのゲームの開発ページです。

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星月欠片の場合 その3 「あなたの犠牲は今日の晩ご飯前くらいまでは忘れません」

忘れた頃にやってくる~♪


あの日、私は不機嫌でした。
仮にも学校の入学式という大事な日に、朝食を全て双子の姉に奪われたからです。
そのせいで私は塩しか口に入れる事ができず、ずっと不愉快な気分のままでした。
だからその時目に入った光景が――

「やめなさい。弱い者いじめなどみっともないですよ」

あの時、そんな声が響いたのを私ははっきりと覚えている。
2年前の入学式直後、名前の事でからかわれ、「根暗」と呼ばれた。
それ自体は小学校の時から同じ。慣れていた。
だからこそ、それがまたここでも起こるのかと思ってイヤになった。
……そしてその時『彼女』は現れ、相手を追い払ってくれた。
「他人を見下して何が楽しいですか。それが人間としての行いですか。分かりましたか――
だから、私は。
「おっ、お願い……っ!」
「……?」
「お友達に……なって……!」
嬉しくて嬉しくて、『彼女』が言った事はほとんど耳に入らなかったけれども、きっといい事を言った……んだと思う。


あの朝、私は不機嫌でした。
仮にも学校の入学式という大事な日に、朝食を全て双子の姉に奪われたからです。
そのせいで私は調味料しか口に入れる事ができず、ずっと不愉快な気分のままでした。
だからその時目に入った光景が、いいカモに見えて仕方ありませんでした(………………………………)。
カモがネギと七輪と木炭と調味料を背負って歩いている程度の。
「他人を見下して何が楽しいですか。それが人間としての行いですか。分かりましたか下層民。奇跡的にも理解できたのならば有り金を全て置いていってください」
その後彼らから親切にも(……・)おごっていただいた、学食のパンは実に美味しかったですよ、ええ。
やはり優秀な暴力装置、もとい優秀な下僕がいると便利です。ねぇ桧垣。


「私……幽霊が見えるんだ」
その日の帰り道、暗子が何か秘密を打ち明けるように告げてきました。
「そうですか、とりあえず病院に行きましょうか。その方面の薬は高値で転売できるらしいので」
そう言うと相手は何やら悲しそうな表情になり、以降そんな事は言わなくなってしまいました。
その事はそれきり忘れていたのですが……。


「今日は……私の家に遊びに来ない、かな、って……」
そんな事を思い返していた日の昼休み、暗子の第一声がそれでした。
いつも通りの教室の自席で桧垣、暗子と共に昼食中です。
「一体どういう風の吹きまわしですか。私も誘拐しても姉から身代金は取れませんよ? むしろ食いぶちが減った事を全力で喜ぶ人間ですので」
言いながら、登校時に買っておいた紙パックのコーヒーを口に運びます。……。ちっ、淹れ方がなっていませんね。
「そんな事じゃなくて……。もっと……星月さんや桧垣くんと仲良くなりたいな、って……」
……。
再び、初めて暗子と会った日の事が思い浮かびます。
だからというわけでもないですが、自分でも珍しいとは思いつつも、首を縦に振りました。
「いいでしょう、興味が湧きましたので」
まあ、放課後のヒマつぶしにはもってこいです。


暗子の家、つまり住んでいるアパートは学校を挟んで駅の反対側という事でした。
私の中学の生徒たちは各自の家から通っているのが普通らしいのですが、私たちの中ではそれは桧垣にしか当てはまらないようです。
暗子は今言ったようにアパートで、私は……。まあこの話は後にしましょうか。


程なくして、暗子の住まいに到着しました。見た目は一般的な安いボロアパートです。
「ただいまー……」
ドアを開けると同時に、暗子がつぶやくように言います。
彼女は一人暮らしだと前に聞きましたので、おそらくただの習慣なのでしょ――
「……?」
ガタゴトと音がし、暗子の持っているカバンが宙に浮き、そのまま奥のクローゼット前までゆっくりと飛んでいきます。
「ありがと、その辺に置いといてくれるかな……」
……。
「星月さん、改めて言うよ。私……幽霊が見えるんだ。紹介するね。私の友達」
そう言って、暗子はいつもと違ったニヤリとした笑みを浮かべました。
そして、何故か桧垣は落ちついたまま。
「……」
それに対し、私の感想は。
「……暗子に友達がいないのは知っていましたが、まさかこれ程までとは」
「……は?」
「構ってくれる人間がいなさ過ぎて、ついに怪奇現象を友達などと思いこむのですね。可及的速やかに精神病院に向かいましょうか。壁一面に眼球が描かれた部屋に一カ月ほど監禁されれば、元の物静かな暗子に戻るでしょうから」
現在の心境を率直に述べると、桧垣に向き直ります。
「ところで、どうしてあなたはそんなに落ち着いているのですか?」
むやみやたらと慌てられてもウザいだけですが、今の桧垣はただ静かというよりも、どこか諦めてるような落ち着き具合に見えました。
「いや、俺も……倉良が幽霊見えるって話、何回か聞いているんで」
倉良とは誰だったかと三秒ほど考え、暗子の本名であった事を思い出しました。
全くもって面倒です。本名の方もとっとと暗子に改名すればいいのに。
さて、それはともかく。
「桧垣、あなたもこの与太話を信じている。そういう認識でよろしいですか?」
「まあ……そうですね」
「……。……、分かりました」
さて、下僕二人の超絶ウルトラお花畑脳細胞を物理的にどうにかする前に。
まずは。
「……」
静かな部屋内にいる『何か』をキッと睨みつけます。
幽霊だろうが何だろうが、そんなものに対して友達面するのが気に食わないので。
「そうですね、私の姉の知り合いに幽霊が大好きな方がいますので、彼女に除霊してもらいましょうか」
オカルト好きを自称しているからには、その程度の怪しげなマジックアイテムなどごろごろ持っているでしょうから。つっきー先輩ならば。
「え、その、ええと……」
「さて暗子、桧垣。あなたたちも霊を撃滅するための方策を考えてください」
「いや、あの……私の友達を祓わないで……」
あたふたとしている暗子を見ているうち、とある事を思い出しました。
「……ところで暗子、あなたは先ほど霊が見える、と言っていましたよね?」
「うん……。うっすらとだけど……」
「ならば、それは今どこにいます?」
「ええと、あそこのタンスの前辺りで、座布団を並べようとしてくれているよ……」
「そうですか」
言うなり姉の持ち物である小型拳銃(エアガン)――盗んだのではありません、無断で借りたまま永遠に返さないだけです――を取り出してタンス目がけて発砲します。
「ひっ……!?」
プラスチック製の弾はそのまま何事も無く家具に当たり、絨毯(じゅうたん)の上に転がり落ちました。
「……」
心の中で舌打ちしつつ、水平に銃口を動かしながら二発、三発、四発と続けて撃ち込みます。
しかし全て弾は奥のタンスや壁にぶつかって止まり、それ以外の対象に接触した様子はありません。
「暗子、悪霊はどこですか? 具体的には頭部、それも眼球の位置を的確に指示していただけるとありがたいのですが」
「あっ、悪霊じゃなくて……、私の友達だってば……!」
「そうですね。友情とは美しいものですね。世界中で最も美しい感情の結晶ですよ」
心にも無い事を言いつつ、その場で考え込みます。
弾はおそらく当たってはいたのでしょう。
ただ、それが手ごたえ無くすり抜けただけで。
物理法則が通じない相手には暴力装置(ひがき)も効かないので、さてどうしましょうか。
「残念ながら、私は目に見えないものは信用しない主義でして。幽霊などといった怪しげなモノは――」
言った瞬間、ちょい、ちょいと肩が何かにつつかれる感触がありました。
「……」
「あ、星月さん、ちょっと下がってもらえるかな……?」
「……?」
暗子に言われるまま、桧垣と共に背後のベッド付近にまで下がります。
と、台所の方から三つのコップがふよふよと浮遊しつつ、こちらに向かってきていました。
「……」
そのままじっと様子を見つめていると、部屋中央のテーブルに飲み物は着地しました。
そしてそのテーブル上には、いつの間にか菓子類が。
「……」
さらには三枚の座布団が浮き上がり、テーブル周囲に配置されていきます。
……ふむ、幽霊が見えるというのは本当のようですね。
下僕二名が私をハメようとしているのでなければ。
もし仮にそうだとしたら、生まれてきてごめんなさいが口癖になるようにしてあげましょうか。
「……ふむ、分かりました。暗子、あなたの話は信じてあげましょう」
「あ、ありがと……」
「ところで幽霊は部屋内に何匹いますか?」
「何匹っていうか人だけど……。ええと、今は三人、かな……。タンス前に一人、台所に一人、星月さんの左側に一人」
「私の左側……ですか?」
とっさに自身の左方に目をこらしますが、そこにはただ何も無い虚空があるだけでした。
「うん……手を伸ばしてるよ。握手したいみたい……星月さんとも友達になりたい、って」
「まだ言いますか。あなたは何か怪しい小麦粉でもキメているのではないですか?」
もしそうだとしたらすぐさま備蓄分を渡してください、転売するので、と続けようとした矢先、自身の右手が何かに包まれる感触がありました。
冷たい……手の様なもの。
「っ……!」
「おわぁっ!?」
とっさに桧垣を突き飛ばし、その反動で後ろに飛び退きます。
「くっ……危うく取り込まれるところでした」
ふと、いつの間にか眼前の桧垣がフローリングの床に倒れ伏しているのに気付きました。
そのまま見つめていてもピクリとも動きません。
「桧垣……私をかばって……。あなたの犠牲は今日の晩ご飯前くらいまでは忘れません」
「いや今突き飛ばした時に頭打ったんだと思うけど……」
「そんな細かい事を気にしていると相手の思うつぼですよ」
さて、適当な事を言っているうちはいいのですが、本当にどうしましょうか。
相手と意思の疎通が取れない以上、私のペースに引きずり込む事もできません。
本当につっきー先輩でも呼び出しましょうか。もしかすると彼女なら幽霊と会話が出来るかもしれませんし。
そもそも私自身が幽霊と交渉が出来れば、このような回りくどい事はせずに済むのですが。
……。交渉、ですか。
「……。ところで暗子、あなたは怨霊との意思疎通は可能ですか?」
「う、うん……。一応私のお願いとかは聞いてくれたりするよ……? でも出ていってなんて言わないからね……?」
「分かりました、そのワードは使わないようにしましょう」
瞬間、私は暗子を羽交い締めにし、例の拳銃をその頭に突き付けます。
「ひっ!?」
「さて、聞こえていますね悪霊ども。暗子の命が惜しくば、私の命令に従ってください。具体的にはそうですね、交霊術などいかがでしょう。面白い見世物になると思うのですが」
「みっ、見世物って……」
「この霊が本物なら、お金がじゃぶじゃぶ入ってくると思うのですが。朝ご飯に塩しか食べられないなんて事も無くなるのです」
「塩って食べるじゃなくて舐めるだと思うんだけど……じゃなくて……その銃の弾ってBB弾……だよね……?」
「弾自体はそうですね。でも以前、姉がノリノリでリミッター解除可能方式に改造していましたので。解除すると木の板程度なら打ち抜く事が出来ると思いますよ」
「えっ、えっ、えと、冗談……だよね……?」
「冗談だと思うのならどうぞお好きに」
にべも無く告げ、ためらわずにリミッターを解除します。
瞬間。
入った時から何となく暗いと思っていた室内が、どこか明るくなりました。
そして銃身を突き付けられて震えていた暗子が、いきなり顔を上げて周囲を見回します。
「えっ……みんな……えっ、えっ、えっ……?」
「どうかしましたか」
「みんなの気配が……消えちゃった……」
そしてやっと私は暗子を開放しました。手首が痛いです。
「……ふぅ。強敵でしたね。ああ、そうそう暗子、ゴーストバスター代はいりませんよ」
「ひっく……ぐすっ……。私のおともだち……ぐすっ……」
恐ろしい悪霊から解放された事が余程嬉しかったのでしょう。
それから私は気絶している桧垣を蹴り起こしました。
「さて、起きなさい桧垣。いつまで寝ているつもりですか」
「……はっ、俺は一体何を!?」
「恐ろしい幽霊に襲われて気絶していたのですよ。もう心配はいりません」
それにしても、人助けとは気持ちがいいものですね。
幽霊の見世物や、圧倒的資金力による姉との立場逆転も死ぬほど惜しいですが、まあ今回は良しとしましょうか。
さて、帰って晩ご飯でも食べましょう。今日の食事当番は姉のようでしたし。
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  1. 2013/07/15(月) 20:35:14|
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