ミステリイーター!

ノベルゲーム「ミステリイーター!」を主とした、いくつかのゲームの開発ページです。

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星月欠片の場合 その1 「世界は退屈です。滅びればいいのに」


そう。
確かあれは中学校の、入学式直後の事でした。
桜の花びらが舞い散る中の、淡くて綺麗で……懐かしい思い出。


「あっ、あの!」
その男子生徒は赤くなりながら、とても真剣な眼差しで。
手にした便箋(びんせん)が微かに震えており、それが彼の心の内をはっきりと表していたのでしょう。
「初めて見たときから……俺、俺……あなたの事が……っ」
……。
その表情と熱意に嘘はないように思えて、私は。
「いいですよ。ただし――」


……。
そうそう。その日には、もう一つの出会いがありました。
「おっ、お願い……っ!」
「……?」
他の新入生に『名前の事で』からかわれていた彼女をかばい、場を立ち去ろうとしたその時。
「お友達に……なって……!」
女子生徒の涙を浮かべたその瞳に偽りは無さそうに見えて、私は。
「いいですよ。ただし――」

「あなたの事が……好きですっ!」「お友達に……っ」
……。

「いいですよ。ただし下僕としてなら。そして私の事は姫、自分の事は犬と呼んでください。あ、敬意も忘れないでくださいね。忘れたら即売り飛ばしますよ?」

え? 外道?
聞こえませんね。世界とは上から見下すものですから。
ビバ世界征服。

……。
それから二年が経過しても、何も変わりありません。
今日も世界は……退屈です。
滅びればいいのに。

「あ、あのっ、星月さんっ」
本日最後の授業である、六時間目終了のチャイムが鳴ると共に下僕が私の名字を呼びながら、席に駆け寄ってきました。
「なんですか? 中間テスト対策のために教師の弱みでも握ったのですか? それなら褒めてあげますが」
「え、えっと……そんな無意味に物騒な事じゃなくて、その、星月さんは放課後予定空いてるのかなぁ、って……」
ちっ、まったく使えない人間ばかりでイヤになってしまいます。
下僕二号のクセに。
「それで、今日は……みんなで遊びに行こうかな、って思って……」
心の中で舌打ちし、無言で教科書をカバンに放り込み、目の前の顔を見つめました。
「どこかいい場所……あるかな……?」
確か彼女の本名は、根元ナントカだったような気がしますが……まあそんな細かいことはどうでもいいですね。
入学時には『根暗』とか何とか呼ばれていたので、代わりに私が新たな名前を付けてあげる事にしたのでした。
まったく、感謝して欲しいものです。
「ところで暗子」
「あの……星月さん、私には倉良(くらら)っていう名前が――」
「桧垣(ひがき)はどこへ行きました? 先ほどからあの間抜け面が見当たらないのですが。あなたは知りませんか、暗子?」
何か非難めいた声が聞こえましたが、それを無視し、言葉を続けます。
その抗議も……まあ気のせいでしょう。
まったく、私も空耳が多くなったものです。歳は取りたくありませんね。
と。
「姫ええぇェェェっ!」
唐突に真横から気配を感じ、スッとその場を立ち退きます。
廊下から一直線に突進してきたのは……下僕一号でした。
「……」
相手はそのままの勢いで学級文庫の棚に激突すると、ピクリとも動かなくなりました。
「あわわわ……桧垣くんが、桧垣くんが……!」
横で暗子が何かをぶつぶつとつぶやいていますが、特に興味はなかったので下僕一号に向き直ります。
「どうしたのですか、桧垣。新しい詐欺の方法でも思いついたのですか?」
「……あ、あの……星月さん、発想がいちいちゲスいのはどうかと……」
「……」
またもや暗子が何かもごもご言っていましたが、謎の言語の解析に興味は無かったので、相変わらず物言わぬ桧垣の背中に飛び乗ってみました。
そしてトランポリンよろしく数度ジャンプ。
「……げふゥッ!?」
相手が覚醒すると同時、飛び降りて近くの机に腰掛けます。
「ひっ、姫、今しがた俺の上で姫が上履きのままジャンプしていた夢を見たぜ……」
「そうですか。怖い夢ですね。ご愁傷様です」
「……星月さん……」
暗子が何やら怪訝(けげん)な視線をこちらに向けてきていますが、まあこれも気のせいですね。
「……くそ、もう少し早く起きていれば見えていたはずなのに……クソっ、俺はなんてもったいない事をしちまったんだあぁぁっ!」
「……」
もっと強く飛び跳ねてやれば良かったかと思案していると、突然桧垣が謎のポーズをとりました。
「……まあ、終わった夢を気にしていても仕方ないな……。そんな事よりも!」
まあこれは下僕の病気みたいなものなので、極めてどうでもいいですね。
「姫っ! 今日こそ、今日こそ俺は言うぜッ! 俺は、俺は……姫の事が大好きだあああッ!!」
「そうですか、私も愛しているかもしれないのでとりあえずコーヒーを買ってきてください。三十秒以内。遅れたら嫌いになります」
「イエッサアァァッッ!!」
叫びながら敬礼すると同時、桧垣が教室の出口向かって全力で走り出しました。
勢い余った彼が廊下で掃除用具入れに激突する音が聞こえましたが、まあ割とどうでもいいですね。
やはりこの世は、どうでもいい事ばかりです。
「あ、あの、ところで星月さん……。今まで桧垣くんから何円踏み倒したの……?」
「そんな細かい事など覚えていませんね。昔の事とサイフの中身は振り返らない主義なので」
そのまま廊下へと向かい、掃除用バケツの中から桧垣(サイフ)を引っ張り出し、汚れた手を彼の服で拭いました。
「さて、行きますよ。桧垣、暗子」
今日も昨日と変わらず、正確な歯車で全ては廻(まわ)っていきます。
世界は……退屈で満ち溢れていますから。


「それで、今日はどこへ行きしょうかっ!?」
校舎を出て、駅方面へと三人で向かう途中。
桧垣が気持ち悪いほどの笑顔で聞いてきます。
「そうですね。桧垣は何か案がありますか?」
「俺は……姫が行くところへならどこへだって行きますよ!」
これが、二年前から「姫」と呼ぶようにしつけた結果です。
見事に立派な脳筋馬鹿に育ってくれました。
これで後はウザくなければいいのですが。まあ無いものねだりはやめておきましょう。
「暗子はどうですか?」
「私は……。二人と一緒に行けるなら……どこだっていいよ……。無問題だよ……」
まったく、相変わらず自主性がない下僕たちです。
まあ、そのように調教したのは私なのですが。
「では駅前の百貨店にしましょう。毛皮系統の服とかいいですね。代金は桧垣持ちで」
と。
ふと見上げた近くの雑居ビルの屋上に、人影が見えました。
その人影はフェンスを乗り越えようとしてはやめ、乗り越えようとしてはやめ、を繰り返しています。
そしてその目は虚ろ。まるで、この世にもう未練が無いかのように。
「自殺……っ!?」
暗子が悲鳴じみた声をあげ、続いて桧垣もおろおろと辺りを見回しています。
「……。そのようですね。まあ私たちには関係ないので――」
無視して先へ行きましょう。一銭の得にもならないので。
そう言おうとしましたが、
「止めなきゃ……っ」
「……ああ!」
「……」
私が引き止める間もなく、二人してビルの中へ入っていってしまいます。
……はぁ。何か面倒な事にならなければいいのですが。
「……まあ、いいでしょう」
誰へともなくつぶやくように言いつつ、私はケータイを取り出し、ある番号をプッシュしました。

非常階段を上り屋上へと到着すると、そこには既に下僕二人と……自殺志願者。
多少遠巻きになりつつ、下僕なりの『説得』を繰り広げているようですが。
「……あ、あのっ、自殺は……無意味ですっ……!」
「……」
「そ、そうだっ! 死んじまったら……ええと、その……。……。……。駄目だぜっ!」
「……」
……はぁ、まったく。
「どいてください」
役立たずの下僕どもを押しのけ、私自ら相手の元へと向かいます。
「さて、そこのあなた。死ぬ気ですか?」
「そうだッ! 俺は……俺には……生きてる価値なんかないんだよォォッ! だからこそ消える! 生きる目的がないから消えてやるっ!」
マシンガンのように言葉を吐き散らす相手に、ゆっくりとしかし確実に近付きつつ、否定を投げつけました。
「そうですか。でも私はそうは思いませんね。あなたにはまだ存在価値がありますよ」
「何を知ったような口を……!」
相手がいきり立ちますが、そんな事は意に介さず私は続けます。
「もしどうしても自殺すると言うのならば、消費者金融で限界までお金を借りて、生命保険に可能な限り加入し、最低限の生命維持に必要な臓器以外を全て売り払ってからです。それなら自殺はむしろプラスになりますよ」
「星月さん、さすがにそれはヒドいと思うよ……」
そう言われて、思わずハッと口元を押さえました。
「……。確かにそうですね、暗子。私が間違っていました」
自分の犯してしまったとんでもない過ちに気付き、しっかりとうなずきます。
「どうせなら身売りして稼いでもらってからの方がいいですね。男の人同士でナニをする場所でたっぷり稼いでから死んでください」
「……」
「私とした事が……。危うくもったいない事をしてしまうところでした。暗子、感謝します」
「えーと……」
「殺してやる……小娘が……俺を見下しやがって……!」
横に立っている、小刻みに震えている人間を軽くつつきます。
「暗子、あなたに殺害予告が出ていますが」
「……それ……多分星月さんが言われているんだと……きゃっ!?」
暗子が悲鳴を上げると同時、彼女が私の目の前から消えました。
いやむしろ……動いていたのは自分の方。
何か強い力で腕が引っ張られたと思うと、首元に当たる、何か冷たくて固い感触。
そしてそれがナイフを首筋に押し当てられているのだと理解したのは、それから一瞬後の事でした。
片方の手でナイフを突き付け、もう片手で私をがっちりとホールド。
……。残念です。動けません。
そして無理やり密着させられている背中が生温かくて、極めて不愉快です。
暗子があわあわしていますが、元々役立たずなので仕方ありませんね。
「そろそろその生意気な口を閉じろ……ッ! さもないと……」
「……」
はぁ。まったくもって……『退屈』です。
この世はいつだってそう。
同じパターンで飽き飽きしてしまいます。
そう、そしてこれも。
「姫を……離せえぇぇっ!」
いつの間に回り込んだのか、死角から桧垣が相手めがけて突進していきます。
「うおおおおっ…………ぎゃーっ!」
軽く避けられて、奥の貯水タンクに激突して動かなくなりました。
万事休す、ですね。


ここでの騒ぎが下からも見えたのでしょう、いつの間にか屋上の入り口には数人ほどの人が集まってきていました。
まあ……『後少し』でしょう。
とは言っても特に何か策があるわけでもないので、相手との会話を続けます。
「ところで、私は一つ気になる事があるのです。先ほどまであなたは死にたがっていたのに、何故今すぐ自殺しないのですか?」
「……死ぬのは変わらないが、お前を殺してからだっ」
まさかこの状況でそんな事を聞かれるとは思わなかったのでしょう、怪訝(けげん)そうな顔になりながらもこちらの質問に返答してきます。
「私としてはあなたがどうなろうと極めて興味は無いのですが、極めて興味は無いのですが、極めて興味は無いのですが、重要な事なので三回繰り返しましたが……あ、もっと続けますか?」
「この……っ!」
「私を殺してから死ぬ。つまり私を殺さない限り死なない。こういう事ですか」
言いながら視線を下僕二名の方に向けると、ちょうど桧垣が蘇生したところでした。
まあそんな事はともかく。
「良かったですね。生きる目的が出来たじゃないですか」
「……?」
「目的など自分で作るもの。違いますか?」
「うるさいうるさいうるさい……っ!」
動揺したのか、手がわなわなと震えてますが、そんな事は無視して続けます。
「それにそんな刃物を何故持っていたのですか? 自殺方法は飛び降りだと思っていましたが」
「……護身用に決まっているだろっ」
「そうですか。死ぬ予定の人間が護身を気にするとは。奇特な方ですね」
「……!」
ちょうど、ようやく屋上まで到達した見物人が数人、こちらを見てザワついています。
自殺志願者もそれに気づいたのか、改めて私を抱え直しました。
「私もこの世は退屈だと思っていました。特に価値は無いと。いつ死んでも構わない、とも」
ふと脳裏に浮かぶ光景がありましたが、軽く頭を振って打ち消します。
「……」
「あぁ、誤解を招かないように先に言っておくと、今でも退屈です。下僕は馬鹿なお子さまと無能な根暗ですし」
「……姫……」
「……星月さん……」
私と相手から離れた場所から二人の声が聞こえてきますが、残念ながら私の今の体勢では良くは見えません。
「? 中二ぼっちとヒキニート、と呼ばれる方が良かったですか? まさか真性のドMですか? ぶっちゃけ引きますが。ドン引きです」
「お前ら……こんな奴が友達で本当にいいのか……?」
自殺志願者が、何か困惑したような声で聞いてきます。
「……」
「……」
桧垣と暗子も何か困ったような表情で、お互いの顔を見合わせています。
まあ、やはりこれもどうでもいいのですが。
「いえ、私は常日頃から言っているので今さらそんな事。それに友達? 冗談もいい加減にしてください。絞めますよ?」
ホールドされた状態で、無理やり首を上に向け、相手を見上げる体勢になります。
「お前にとってその二人は――」
「ただの下僕ですがそれがなにか?」
相手の言葉が終わらないうちに、カウンター気味に告げてやります。
「最低だ……」
背後から見物人らしき男性の声が聞こえてきましたが、そんな事は知った事ではないので会話を続行します。
「それに離反したら……簀(す)巻きにして売り飛ばしますので。どこぞの奇特な金持ちが高く買ってくれると思いますよ」
「……。ほしづ――」
「何ですか? 口を開くことを許可した覚えはありませんよ?」
一瞬経ち、彼女が言おうとしたのが万が一にもあり得ない抗議などではなく、私への警告であると気づきました。
先ほどからずっと私を抱え込んでいる自殺志願者が震えています。
それは決して恐怖や武者震いといった類などではなく。
「……殺す。殺してやる……!」
……。
ふむ、さすがに煽りすぎましたか。
まあ……いいでしょう。
視線を屋上入口の扉に向け、そこに『ある人物』を認め、心の中でほくそ笑みます。
さらに、興奮した相手はまったく『それ』には気づいていません。
「残念ですが、私は死にませんよ。私にはもう……目的がありますので」
最後の詰め、です。
大きくため息をつき、
「というかそろそろいい加減に離れていただけませんか? 臭くて邪魔なのですが」
「……っ!!」
瞬時に激高(げっこう)した相手が振りかぶります。
頭上に鈍い銀色がきらめき、今度こそ本当に振り下ろされる事がいとも簡単に予想できました。
それはたやすく私の胸を貫き、辺りに血潮をまき散らすでしょう。
……もし仮に振り下ろされたならば、ですが。
……。
そしてナイフと共に振り上げたその手に――

ガシャンと手錠がかけられました。


「大丈夫だったか、嬢ちゃん」
タバコをくわえた若めの警官らしき男が、こちらの頭をぽんぽんと叩いてきます。
……。あらイケメン。まあ特に興味はありませんが。
彼の部下なのでしょう、彼が数人の警官に指示を飛ばしている間、例の自殺志願者に話しかけます。
あ、もう自殺志願者ではありませんね。むしろ殺人未遂でしたね。実に物騒で怖いです。てへぺろ。
「何で……このタイミングで警察なんかが来るんだよ……。俺は……死にたかっただけなのに……っ」
「いえ、屋上に来る前にあらかじめ『建物の屋上で暴れている変質者がいる』と警察に連絡しておいたまでです」
「! このっ……」
「……ハッ。何ですか、負け犬。弱い犬ほど吠えるとは良く言ったものですね。三回回ってワンと言ったらご褒美でもあげましょうか?」
相手だけに見えるように、中指を立てて鼻で笑ってみます。
「このガキィ……っ!」
相手が立ちあがった瞬間、スッと身を引き警官を盾にするように回り込みます。
「ひぐっ……うぇっ……おまわりさん、この人が、この人が……っ」
遠くで暗子が、何か恐ろしいようなものを見る目で私を見ています。まあいつも通り気のせいですね。
「あー、よしよし。もう大丈夫だからな。……おいこら暴れんな、行くぞっ」
「離せ、俺はあの小娘を殺してから死んでやるんだあああああ――」
相手が警官数人に引きずられていくのを、実に面白く眺めながら、誰へともなく拍手します。
それにしても、安全圏からの挑発ほど楽しいものはありませんね。
「姫……」
「なんですか?」
「楽しそう……ですね」
「そうですか?」
おっと、口元が多少なりとも歪んでしまったような気がします。
反省反省。


「姫、俺、ちょっと聞きたい事があるんですが」
「? 何ですか?」
先ほどの屋上を出て、予定通り駅ビル方面へと向かいます。
三十分ほど時間を無駄にしてしまったでしょうか。……ちっ。
「さっき、退屈だからいつ死んでも構わないって言ってましたけど」
彼が珍しく、何かを考え込む様な仕草をしています。
まあ、仕草だけなのかもしれませんが。
「その、姫の目的って何かなぁって。もしかしたら俺にも何か手伝える事が……」
「そうですか。粛清(しゅくせい)が必要なようですね」
「いや、とっとと死んで欲しいって事じゃなくてですね!」
あわあわと両手を振る桧垣には目もくれず、同じくこちらを見つめている暗子に視線を向けました。
彼女も同じく、何かを聞きたそうにこちらを見つめています。
「退屈っていっつも言ってるのに、その目的があるから姫はその……生きてるわけですよね? それが気になって」
「……」
予想外の質問に一瞬詰まり、答えずにそのまま歩く速度を上げました。
「あ、待ってください、姫ー」
「星月さんっ、歩くの、早い、よっ……!」
……。
世界はやはり……退屈です。
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  1. 2012/10/07(日) 15:36:19|
  2. 生徒会系
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